夕日・光と影

 昨日の午前まで雨が降り続きました。六甲山麓の地域で避難勧告が出されました。地震でずれた地形が、雨で土砂崩れの恐れがあるそうです。
 わたしにとって、ここ2、3日続いた雨は、ある意味では恵みの雨でした。アスベスト等の空気の汚れによる喉の痛みがおさまっていたからです。
 同じ雨が、同じ神戸に住んで震災の後遺症に対峙し続ける者にさえ、それぞれ違ったあらわれ方をします。

 午後から雨も上がり、きれいな夕日を久しぶりに見ることが出来ました。更地の目立つ神戸の繁華街を真っ赤に照らす夕日を、立ち止まって見上げる人の姿を何度か見ました。それらの人がどんな思いで夕日を仰いだのか知る術(すべ)がありませんが、わたし自身は、その真っ赤の太陽よりも、それを仰ぎ見た人の姿に目が留まりました。

 取り壊しの始まったビルの陰に、傾いた2階建ての木造アパートが見えました。半年間放置されていたそのアパートに、取り残された者の影を思いました。

 光と影が神戸の街をおおっています。
July7,1995

itsumi
震災