雑草
小さな庭が、今週の寒さの緩みと雨とで、草が生い茂るような感じになっています。刈り取ろうかあ~と思ったのですが、ふと、昭和天皇・裕仁の逸話を思い出しました。
「宮中侍従物語」(1980年)という侍従たちのエッセーをまとめた本の中で入江相政侍従のエッセーに書かれたエピソードとして、今から60年ほど前の夏が過ぎた9月に、吹上御所の庭の草が茂りすぎたので、侍従になったばかりの田中直侍従は、那須からのお帰りまでに、建物から10mくらいの雑草は全部刈り、庭園としてすっきりさせたそうです。9月中旬に那須から帰った天皇裕仁は田中侍従を呼んだそうで、田中侍従庭をきれいにしたお褒めの言葉と思いきや、予想外のお叱りだったそうで、
天皇 「どうして庭を刈ったのかね。」
田中 「雑草が生い茂ってまいりましたので、一部お刈りいたしました。」
天皇 「雑草ということはない。」「どんな植物でも、みな名前があって、それぞれ自分の好きな場所で生を営んでいる。人間の一方的な考え方でこれを雑草としてきめつけてしまうのはいけない。注意するように」
一説では、「雑草という草はない」という言葉は天皇裕仁のオリジナルではなく、牧野富太郎の言葉を、天皇裕仁が引用したものだという意見もあります。
作家・山本周五郎は、若い頃に雑誌の編集記者だったそうで、植物学者の牧野富太郎の元に取材に行き、何気なく「雑木林」という言葉を使ったところ、「どんな花にも、どんな木にもみな名前がある。雑木林というのは人間の作った勝手な言葉だ。」と咎められたという話があります。
天皇裕仁は1948年(昭和23年)に進講という名目で牧野富太郎と会っています。大学を経ずに研究を続けた一途な牧野に天皇裕仁は人柄に惹かれたのかもしれません。人間の勝手な都合で、ある植物群を「雑草」と呼んでしまう傲慢さ、天皇裕仁の「雑草という草はない」という言葉を思い浮かべて・・・そのままにしました。
寒椿の蕾が、かなり膨らんでいます。
もう少しで、花を愛でることが出来るのかな~と期待しています。
2階の日当たりの良い処で、ヒヤシンスが、もうすぐ開花しそうです。一昨年球根を買って、昨年の冬に花開いて、その後、球根を育てたもので、あまり球根が育たなかったので、水栽培ではなくて、鉢植えにしました。