deep river
Deep river, my home is over Jordan.
Deep river, Lord, I want to cross over into camp ground.
Oh, don’t you want to go to that gospel feast.
That promised land where all is peace.
黒人霊歌より
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モーセは、海を渡って出エジプトを成し遂げ、シナイ野を40年間彷徨った後に、ヨルダン川の手前まで辿り着くことが出来ましたが、ヨルダン川を渡ることは出来ませんでした。
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「わたしは今日、既に百二十歳であり、もはや自分の務めを果たすことはできない。主はわたしに対して、『あなたはこのヨルダン川を渡ることができない』と言われた。 あなたの神、主御自身があなたに先立って渡り、あなたの前からこれらの国々を滅ぼして、それを得させてくださる。主が約束されたとおり、ヨシュアがあなたに先立って渡る。
申命記31章2節、3節(新共同訳、旧約聖書)
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遠藤周作は、この黒人霊歌に牽かれて、小説「深い河(ディープリバー)」を書いたと言われています。遠藤周作の「深い河」は、ヨルダン川ではなくて、インド人のすべてを飲み込み流してくれる偉大で聖なる河・ガンジスを象徴しています。モーセを阻んだヨルダン川ではなくて、すべてを許し飲み込んでくれるガンジス河です。
深い河をはじめて読んだのは、東京から新大阪に向かう新幹線の中だった記憶があります。
そして神戸で1・17の震災に遭って、その春に映画「深い河」が封切り。神戸では上映できる映画館がなくて、大阪梅田まで見に行きました。その時に買ったポスター、ずっと部屋に貼っていると、直射日光は当たりませんでしたが、結構褪色しています。
その後、夏前に明石で上映されたので、明石まで見に行って、翌年、神戸で上映された時にも足を向けたので、3回映画館に観に行ったことになります。
遠藤周作は、J・ヒックのpluralism(宗教多元主義)の影響を多分に受けて、それが、この「深い河」にも色濃く出ていると言われ、実際に宗教多元的な視点で描かれており、この小説が発表された時には、キリスト教の教会で賛否の意見が交差したようです。
慶応大(当時)の間瀬先生が、J・ヒックの思想を日本に紹介して、間瀬先生の講義でも扱っていました。
当時の講義ノートを久し振りに読み返すと、間瀬先生の哲学の授業の後半は宗教哲学の内容で、宗教多元主義を結構扱っていました。
遠藤周作が「深い河」で著わしたかったのは、日本人的なキリスト教なのか?それとも普遍的なキリスト教なのか?クリスマスを控えて、久し振りに「深い河」のビデオを観たいなあ~と思いました。