史的イエス

 本棚に何冊か、清水書院の人と思想シリーズが並んでいます。伝記っぽい内容や著作の概要などがコンパクトにまとめられていて、ある人の思想を知るときの水先案内のような感じとして、便利に読んでいます。

 ブルトマンは一般にはそれほど知られた思想家ではないですが、非神話化を提唱した神学者であり、キリスト教に留まらず、仏教においても、経典を現代にあわせて合理化するのではなく信仰の言葉として主体的に捉えて、自らを信仰へと決断させるものとして解釈して行こうとすることが、まさに非神話化に通じるように感じます。

 新約聖書の記述は、新約聖書が書かれた当時の神話的世界観を伴っているために、現代の視点からすると科学的ではないですが、非神話化することによって実存論的に解釈しなおし、聖書本来のメッセージに耳を傾けようとするものです。史料批判の中でも、聖書原典の正しい読みやつづりを確定するための本文批評学が下層批評と言われるのに対して、聖書の正真性や正典性、起源や著者問題などの内容分析や解釈などを合理的で批評的に行なうことを上層批評や高等批評と言われ、宗教的に有益な寓話として受け入れるのが自由主義神学ということになります。

 ブルトマンは、聖書の記述に内在する核心的なメッセージを悟るために、実存論的に解釈をしなおして聖書に向かい合おうとしたわけです。聖書の非神話化の中で、史的イエスが問題となってきます。イエスとは実際にはどんな人物だったのか・・・遠藤周作に2つの作品があります。

遠藤周作「イエスの生涯」新潮文庫

 日本人という立場での、キリスト者として受け入れるイエス像を模索した作品で、描かれているイエス像は弱々しく無力な人です。

遠藤周作「キリストの誕生」新潮文庫

 イエスの死後、無力に死んだイエスがキリストとして弟子たちの心の中で生き始めて、使徒となることを描いています。

 新約学の松永希久夫の冊子が出てきました。

「史的イエス像」考察、松永希久夫 東神大パンフレット

 随分前に読んだままです。この冊子を久し振りにじっくりと読み返したいと思うのですが、正月明けになるだろうなあ~と・・・

itsumi
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