第九

 神戸文化ホールでの「市民の第九」のコンサートで、ベートーベンの交響曲9番「合唱付き」を聴きにいきました。第九のコンサートは初めてです。

 「市民の第九オーケストラ」と「市民の第九合唱団」という、この演奏会のための市民参加型のオーケストラと合唱団の共演のようです。それに指揮者とソプラノソリスト、アルト、テノール、バリトンの4人のソリストとコンサートマスターを迎えての演奏でした。

 会場の神戸文化ホールには、第九コンサートの幟がありました。

 13時45分開場で14時30分開演のところ、13時半頃に文化ホールに到着すると、ロビーの外まで溢れて、寒い中で15分以上待つのかなあ~と思っていると、数分で入場がはじまりました 。

 1階席の後ろから数列目ぐらい、ほぼ中央の座席で、全体を俯瞰するような感じで、お気に入りのポジションに座ることが出来ました。

 開演前に、コントラバス、チェロあたりのパートが入ってきてステージで音出しを始めました。

 オーケストラが揃うと合唱団も次々とステージの壇上に・・・

 耳慣れた第九で、第1楽章の冒頭の部分は、第4楽章と共に大好きです。ベートーベンだなあ~という雰囲気を醸し出して、続く第2楽章のスケルツォの力強い演奏も良かったです。CDだけではあまり意識していなかったですが、ティンパニーが主導するような場面が多く、ついついティンパニーに目が向いてしまいました。

 第2楽章が終わったタイミングで、4人のソリストが入場してきました。演奏会での第九は初めてだったので、帰宅してから調べると、第2楽章や第3楽章が終わるタイミングで合唱とソリストが入る形式や、最初から合唱とソリストが待機している形式など様々あるようです。今回の演奏会では合唱は最初から待機で座っており、ソリストが第2楽章が終わるタイミングで入場する形式だったようです。ソリストも含めて最初からステージで座って待機する形式もあるようです。

 第3楽章は、第1楽章と第2楽章とは違って全体的にゆったりとした感じで、CDで聴いていると怠いと感じることもあるのですが、実際にステージの上での演奏を見ていると、緩やかで静かな演奏に魅せられました。第3楽章の途中で、合唱の中の女性の一人が体調を崩されたようで、演奏が続く中、合唱の一角では、その女性を気遣う様子が見られ、つい目がそちらに向いてしまいました。隣の女性が壇から降りて楽屋に入って、係の人が入ってきてやりとりがあったのですが、結局は、退出することなく、そのまま壇上にいました。

 そして第4楽章、これもCDで聴いていると意識していなかったですが、コントラバスとチェロが引っ張っていくような感じで曲が進むのが視覚的によくわかって、演奏は耳の聴覚だけではなくて、視覚の眼でも愉しむ要素が大きいことを実感しました。これがその後のバリトン独唱の「O Freunde, nicht diese Töne! (おお友よ、このような音ではない!)」につながるのだなあ~と、演奏会で第九を見聞きして、はじめてわかりました。

Sondern laßt uns angenehmere
anstimmen und freudenvollere.

(我々はもっと心地よい
もっと歓喜に満ち溢れる歌を歌おうではないか)

 冒頭の歌詞は、シラーの「歓喜に寄す」ではなくて、ベートヴェンのものだということも初めて知りました。

 バリトンの独唱の時は、コントラバスとチェロ、それにヴァイオリンとヴィオラが加わって、テノールやアルト、ソプラノの歌声が呼応して、そして合唱と続き、楽器と声楽が織り成す歓喜の歌を眼で見てそして耳で聴いていると、感動して鳥肌が立ちました。

 最後のクライマックも、演奏や合唱を眼で見て聴くと、ものすごいテンポの速さを実感しました。

 途中で体調を崩した女性の方は、第4楽章の最後で、また体調を崩されたようで、舞台裏の係の人に誘導されて静かに壇上から降りて行かれました。

 手元にはベートーヴェンの第九のCDが2枚あり、そのうちの1枚は、第2次世界大戦終了後に、はじめてバイロイト音楽祭が再開した1951年の初日の7月29日に演奏された第九。バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団で、指揮はフルトヴェングラーの録音です。「バイロイトの第九」と呼ばれる第九の演奏の歴史の中でも有名という評判で買ったCDです。今から73年前のモノラルの録音で、決して高音質とは言えないですが、名演奏と呼ばれています。指揮者のフルトヴェングラーはレコード化を拒絶していたので、この音源がレコードとして発売されたのはフルトヴェングラーの没後だったそうです。この東芝EMIの音源には、フルトヴェングラーがステージに入場する足音が入っているので「足音入り第九」として有名だそうです。しばらく聴いていませんでしたが、明日の朝にでもゆっくりと聴こうと思います。

 明日12月8日が太平洋戦争開戦の日、そして旧暦12月14日が赤穂浪士討ち入りの日、第九を演奏会で聴いて、そして帰路の街中のクリスマスの雰囲気もあって、年末を感じました。

itsumi
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