学校

山田洋次監督の作品に「学校」という全4作の映画があり、1993年から2000年に制作されています。
第一作の「学校」は最初の1993年公開で夜間中学校が舞台、1996年公開の「学校Ⅱ」は特別支援学校が舞台、そして1998年公開の「学校Ⅲ」では職業訓練校が舞台で自閉症の子供を持つシングルマザーを扱っており、最後の「十五才 学校Ⅳ」は2000年公開で、学校が舞台になっておらず、不登校と引きこもりをテーマにしています。

山田洋次監督の映画に興味を持ったのは、寅さんシリーズではなく、1970年公開の「家族」を、会社勤めしていた時に当時の会社の同僚と伊豆旅行した折に宿泊した民宿のような宿でTV放送していたのを、その時は全編見たわけではないと思うのですが面白いなあ~と思ったのが最初です。手元には「家族」と1972年公開の「故郷」、1975年公開の「同胞」、そして1977年公開の「幸せの黄色いハンカチ」のVHSビデオテープがあります。VHSビデオデッキはありますが、長らく使っていないので、これらのテープは今は持っているだけです。「遙かなる山の呼び声」と「息子」も好きですが、TV放送を録画したものしかありません。

「学校」シリーズは「学校」と「学校Ⅲ」のVHSテープはありますが、それ以外はTV放送の録画だけです。
この土日の週末、久し振りにTV放送を録画していたものを見て、今日の午後、寒くなってきたので自宅にこもって最後の「十五才 学校Ⅳ」を見ました。

さまざまな理由で夜間中学校で学ぶことになった生徒の、それぞれのストーリーを織り込んでおり、映画の最後で在学中に亡くなった「イノさん」の訃報を受けてホームルームで偲び、そこで「幸福」をテーマにみんなが考えるシーンです。「家族」では一番好きなシーンです。

今日観た「十五才 学校Ⅳ」では不登校の中学生が横浜からヒッチハイクで屋久島を目指すのですが、大阪から宮崎までは女性ドライバーの運転する長距離トラックに乗せてもらい、宮崎に着いて、そのドライバーの家に泊めてもらいます。そのドライバーの息子が引きこもりで、不登校の中学生と友達になって、次の朝、中学生が家を出る時に、ジグソーパズルをもらい、その裏に、引きこもりの息子の詩が書かれていました。
草原のど真ん中の一本道を
あてもなく浪人が歩いている
ほとんどの奴が馬に乗っても
浪人は歩いて草原を突っ切る
早く着くことなんか目的じゃないんだ
雲より遅くて十分さ
この星が浪人にくれるものを
見落としたくないんだ
葉っぱに残る朝露
流れる雲
小鳥の小さな呟きを
聞き逃したくない
だから浪人は立ち止まる
そしてまた歩き始める
日向国浪人 大庭登

屋久島に行って、そして横浜に戻って、映画の最後では久し振りに登校します。担任の先生は何ごともなかったように朝のショートホームルームで「久し振りに出席をとろうか」と、呼名して生徒が「はい」と返事をするのですが、不登校だった主人公の名前を担任が呼んでも声が出ず、クラス全体が注目して、担任も心配しながらもう一度名前を呼ぶと、意を決したように深呼吸をして「はい」と返事をして・・・映画は終わりました。
どちらかと言えば学校を巡るマージナルないろいろなことを全4作のシリーズで扱っており、「学校」では義務教育を修了できなかったイノさんと東大附属病院の若い医師との出逢いのコントラスト、それに「幸福とは?」という問題。「学校Ⅱ」では高等養護学校の就職問題。「学校Ⅲ」ではリストラ・不景気と職業訓練校、それにシングルマザーと自閉症の子どもの家庭。「十五才 学校Ⅳ」では学校に行かない不登校の問題と、若年引きこもり。
第一作の「学校」に触発されて、2,3度夜間中学校の参観をしましたが、そこで学んでいる生徒は、東南アジアからの若い人が多かったです。戦後の傷跡をカバーするような夜間中学校の姿から、今は夜間中学校の在り方も変わりつつあるようです。現在全国に44校の夜間中学があるようで、神戸市内には2校。そして東京には千代田区立神田一ツ橋中学校に通信課程があります。